

歯の矯正、もう少し費用が安いと有り難いんだけど・・・
突然ですが、皆さんは自分の歯の数をちゃんと把握していますか?子供のころ、大人の歯は32本と習いましたよね?もっとも、このうち4本は親知らずで、元々全て生える人もいれば、全て生えない人もいます。という事で、自分はまだ永久歯を1本も抜歯していないから、28本はあるだろうと思い込んでおられる方は多いのではないでしょうか?
ところがどっこい、1本くらい足りてない可能性も大いにあります。その一方で、親知らずは1本も生えていないのに、なぜか29本も歯があるという人もいて、人の歯の本数は皆必ずしも同じではないのです。
ちなみに、前者は「欠如歯(けつじょし)」、後者は「過剰歯(かじょうし)」と呼び、いずれも先天性の疾患です。しかも、過剰歯は欠如歯に比べれば少ないと言われているものの、日本人の30人から40人に1人の割合でみられるというからビックリでしょう。そうなると、欠如歯の人はそれ以上に多いという事で、益々気になるところです。
でも、大丈夫。自分自身で気が付かないという事は、仮に多くても少なくても、日常生活には大して支障ないものと思われます。だからこそ、今日まで自覚がなかったのです。とは言え、欠如歯はすきっ歯を、過剰歯は出っ歯や八重歯を招く確率が高まります。実は、日本人は世界でも有数の歯列不正民俗だと言われているのですが、その要因の一つが、欠如歯や過剰歯の多さという事で、なるほどという感じです。
ではでは、もし、自分が欠如歯や過剰歯だと分かればどうすればいいのでしょうか? 答えは簡単、矯正するっきゃないでしょう。されど、それには大金がかかるという事で、今日はそんな歯科矯正とお金のお話です。
確かに、海外の人たちは皆、比較的歯並びが綺麗ですが、彼らだって元は我々日本人と似たようなものです。生まれながらにして、永久歯が規則正しく生え揃う星の下にいる人は特別多くはありません。
そこで、アメリカでは子供が矯正歯科に通う事は、塾やスポーツクラブに通うようなもので、成長過程における大切な工程の一つだと言われています。少なくとも、中流以上の課程に生まれた子はみんな半ば強制的に矯正させられていて、そのお陰で歯並びの綺麗なお国柄になっている訳です。
それに比べて日本は、生まれ持った体を極力大切にする性質があります。日常生活に支障がないのであれば無理に改造する必要なし。この基本概念に基づき、歯科の世界でも特に噛み合わせに問題がなければ、矯正は不要とおっしゃるドクターも少なくありません。
ただ、人間の口の中の構造から考えると、歯列不正で100%咬合正常という人はいないでしょう。大なり小なり不具合はあって、それがやがて、加齢とともに重症化する危険性を秘めています。さらに、豊かになった現代日本では、国民の美意識も高まり、やっぱり歯並びは綺麗な方がいい。出っ歯やすきっ歯、八重歯がコンプレックスの一つになっている人も多いものと思われます。
そんなこんなで、近年は日本でも、積極的に歯科矯正をすすめる医師が増え、興味を持つ庶民が増えて来ました。しかしながら、歯の矯正の期間と金額は中途半端なものではありません。とにかく時間とお金がかかります。
ぶっちゃけ、“もう少し安いと有り難いんだけど・・・”、と皆さん思っておられる事と思います。ところが、だったら、いくらくらいなら「安い」と思えるのかと尋ねられると、案外首をかしげて固まってしまわれるんですよね。そこで、まずはその辺りから考えてみたいと思います。


歯の矯正、いくらくらいなら治療費が安いと言えるんだろう?
歯の矯正はとても高価な治療です。そこで、少しでも安い方が嬉しい。でも、いくらくらいなら本当に安いのかと尋ねられれば、とっさに答えられない。これが多くの日本人の状況だろうと思われます。というのも皆さん、そもそもの相場が分からないのです。
歯科医院や大学病院のHPを見ても、明確な治療費と言うのは掲載されていません。目に付くのは治療方法や施術によって改善された症例ばかりです。そのため、取り敢えず、まず、器具代が30万・50万・70万・・・。そこに検査費だの、メンテナンス費だのと、先生の技術料や様々な装置の使用量みたいなのが加わり、あっという間に100万円を超えるという噂もあります。
もっとも、実際には80万から90万で収まる人が多いようですが、中には70万ほどだったという人もいれば、150万円近くかかったという人の体験談もあるではありませんか。そう、歯科矯正の治療費用というのは、相当に個人差が大きいのです。その最大の理由は、複数の治療法があって、使用する装置が異なるためです。
さらに、同じ治療方法でも、使用する装置の素材によって価格が違って来るという特徴も持ち合わせています。加えて、大人でも子供でも殆ど費用が変わらないのが矯正歯科です。むしろ、子供の方が高く付く事も珍しくないようで、我が子の歯並びを気にする両親にとってはとどめとも言える驚きの話でしょう。
しかも、歯科矯正は健康保険が使えません。原則として自由診療で、全額自己負担の世界です。そんなこんなで、相場を調べたくても調べられないのが現実です。
強いて言えば、下記のような感じでしょうか。
- 初診料・・・2,000円から6,000円前後
- 検査料・・・10,000円から60,000円前後
- 矯正装置料・・・100,000円から1,500,000円前後
- リテーナー・・・5,000円から10,000円前後
- 診察料・・・1,000円から10,000円前後
- 定期検診料・・・1,000円から5,000円前後
上記は具体的な症例を上げ、このような状態だった患者さんが、このような治療で、こんな風に改善されましたぁ!で、この時の費用はいくらくらいでしたぁ!という情報をアップしてくれている歯科矯正専門の院の金額を寄せ集めて、筆者が勝手に計算したものです。
ですので、信憑性にはいささか、いや、かなり欠ける部分はありますが、ただ、まさしく経験者は語る。100万円以上かかったという人がいるのも納得出来るところでしょう。となると、100万円を切る価格なら、決して高い訳ではなさそうです。人によっては、十分安いと評価される方も多いものと思われます。


最も安い歯の矯正装置と最も高い歯の矯正装置は?
上記を見ても分かる通り、なんだかんだ言っても、やっぱり歯科矯正の値段を決めるのは矯正装置です。そこで、最も器具代が安いのはどれかを考えてみましょう。
現在、日本の歯科矯正で用いられる装置は主に2つ。実は入れ歯の代わりとして人気のインプラント治療を用いた矯正もあるにはあるのですが、まだまだ国内では普及して折らず、それこそ、治療出来る意思もごくごく僅かです。そこで、基本的にはブラケットという板状の器具にワイヤーを通した装置か、マウスピースかになります。
後者はマウスピースを装着する事で負荷を掛け、歯を動かそうという作戦。「インビザライン」と呼ばれるアメリカの会社が出す装置と、「アソアライナー」と呼ばれる日本生まれの装置がありますが、いずれも治療方法は同じで、価格的にも大差はないと言えるでしょう。
それに対し前者は、ブラケットを歯の表面に治療用の接着剤で貼り付け、ワイヤーで引っ張って歯を動かします。そう、金属の板を針金で繋いだような器具を歯の表面に取り付けられ、ロボットのような口元になるあの昔ながらの技法です。
このブラケット法には、歯の表側に装置を付ける「マルチブラケット法」と、「歯の裏側に装置を付ける「リンガルブラケット法」があり、後者は人目に付く事を避ける事が可能。また、前者でも、従来の金属色ギラギラの器具ではなく、白くて綺麗なセラミック製の板に白い針金という審美ブラケットもありますから、見た目が気になるという方は、これらを選択されるのがおすすめです。
ただし、どちらも一長一短で、特に審美ブラケットは材料費が高いため、必然的に治療費が高くなるというデメリットを持っています。その点、裏側矯正なら元々人目に付かない部分に装着する訳ですから、素材に深くこだわる必要はありません。金属製のブラケットで十分です。
けれど、舌が器具に当たり、飲食や会話がしにくくなるというデメリットがあります。加えて、歯の裏側に装置を取り付ける施術は高度な技術を要するもので、治療出来る病院やドクターが限られて来るでしょう。当然、治療費用も高くなり、審美ブラケットを使ったマルチブラケット矯正より高価になる事もしばしばです。
こうしたブラケットを使った矯正治療のデメリットを全てフォローするのがマウスピース矯正。薄くて透明なので目立たない上、飲食時には取り外せます。ただ、見るからに簡易な方法で、患者さん自身の負担は軽い反面、責任が重く、トラブルの多い治療法でもあります。費用面でも審美ブラケットと同等です。つまり、これら先進の矯正法はいずれも、それなりのデメリットがあるにも拘わらず高価なのです。
ですが、元祖歯科矯正術である金属ブラケットを使った表側矯正は、取り敢えず費用だけは安く抑えられるというメリットを持っています。しかも、最も多くの症例に適用する方法でもあり、誰もがお手頃価格で歯並びを整えられるのです。


もし子供だったら、もし保険が使えたら、歯の矯正は本当に安いのだろうか?
日本には、健康保険という素晴らしい医療サポート制度があります。また、何かにつけ子供料金というのが設定されていて、福祉面ではかなり恵まれた国だと言えるでしょう。という事で、もし保険が使えたら、もし子供だったら、歯の矯正費用も少しは安くなるんじゃないかと考えたくなりませんか?
まあもっとも、歯科矯正は保険対象外である事は誰もが承知しているところです。そこで、せめて小さいうちに矯正を・・・と思われる親御さんは少なくないだろうと思われます。まあこれは間違ってはいません。何しろ、本気で我が子を歯並びの綺麗な子にしたければ、理想の治療開始期間は5歳から7歳なのです。
ただし、この年齢はまだ乳歯がふんだんに残っていて、歯列矯正のしようがありません。そこで、一期治療としてマウスピースなどで顎の形状を整え、将来正しい一に永久歯が生え揃うように準備します。その上で、成長して永久歯が生え揃ったときに、マルチブラケット矯正で歯の一と向きを整えるというのが小児矯正。そのため、治療完了まで5年以上、長い子になれば10年近くかかります。
確かに、一期治療を受ける事により、二期治療の本格的な矯正は比較的短期間で終わる可能性が高く、幼い頃から治療する価値は十分あります。また、同じ歯科で継続して治療する場合、治療費が割引になるケースも多いようです。それでも、事前にある程度のお金を払い、再びここでとなると親としては大変です。
一方、保険治療については100%対象外という訳ではありません。厚生労働大臣が定める特定の選定制疾患が認められれば、破裂矯正だって保険が使えるのです。しかも、対象疾患の数は一つ二つではなく、40種類以上もあります。ですが、筋ジストロフィーやダウン症候群など、やはり重度の障害を伴う疾患ばかりで、ただの欠如歯や過剰歯では対象外になってしまうのが現状です。
そんな中、元々顎の骨の形や大きさに問題があって歯並びが悪く、噛み合わせが悪いという人は案外多いものとみられます。そうなると、「顎変形症」という事で、たちまち保険適用となりますので、気になる方は一度医療機関で検査を受ける事が大切です。
ただ、顎変形症の場合、いくら歯列矯正しても、それで症状が改善される訳ではありません。最終的には顎の骨を削るなどの外科的手術が必要で、矯正歯科と口腔外科との総合治療となります。しかも、この手術には入院や長期にわたる食事療法などが付帯し、それらも保険は使えますがあくまでも3割負担。治療期間も非常に長く5年以上に及ぶため、仕事への影響等も加味すると、決して安いとは言えないようです。
という事で、矯正歯科においては、もし保険が使えても、もし子供のころから治療開始しても、特別安いという訳ではありません。しかしながら、歯の矯正費用は医療費控除が受けられるため、税金の還付という形で支払いの一部を取り戻す事は可能です。まあこれだけが唯一の救い、福祉大国日本に感謝と言える部分ではないでしょうか。


歯の矯正、治療費用は少しでも安い方がいいと思うなら
上記の通り、歯の矯正は治療方針によって大きく費用が事なります。ただし、どんな治療計画にも必ず組み込まれるのが治療開始前の検査、そして、治療終了後のリテーナーと定期検診費でしょう。
「リテーナー」とは、大がかりな矯正装置を外したあとに、歯が後戻りするのを予防するために装着する補足装置の事。矯正期間中の器具のようにずっと付けっぱなしという訳ではなく、就寝時だけ付けるものですが、その装着時間が大幅に不足するといつまでたっても治療完了となりません。実際、半年程度で終了する人もいれば、2年以上継続させられる人もいます。
そして、定期検診料というのは、そのリテーナー装着期間中の通院で支払いする費用です。長引けば長引くほどかさみます。ですので、これらのお金はしかたがないとして、問題は、どのような器具を使って、どのような方法で治療するのか? その選択が価格を決める大きなポイントとなる訳です。
確かに、歯は大切な身体の一部です。安かろう悪かろうでは話になりません。安全面や快適さも重要。加えて、顔のパーツの一部である事を考えると、見た目も全く気にしないという訳にいかない人も多そうです。実際、見た目や快適さに拘りすぎるがために必要以上に高価な器具や治療法を選択する人が後を絶たないという現実があります。
しかしながら、少しでも安い方がいいというのであれば、昔ながらの金属ブラケットを歯の表側に装着する方法を選ぶべきでしょう。しかも、これは最も多くの人に対応可能です。加えて、口の中はオンリーワンである上、歯の矯正は個人の自然治癒能力に頼る部分の大きな治療です。
つまり、患者とドクターの治療方針がしっかり一致しなければ成功を導く事など出来ないのです。それを考えると、病院選びも非常に重要になります。事実、途中で投げ出す先生もいたりなんかして、弁護士への相談や質問が絶えません。やはり目安としては最低限、日本矯正歯科学会に所属している先生のいる医院。さらに、その認定医や専門医がいれば、なおの事よしです。
しかも、こうした医療機関は、年間に多くの患者を治療し、多くの矯正装置を購入しています。医療機器メーカーにしてみれば有り難いお得意様。比較的安価に納入されるため、治療費用全体を安く抑えられるというメリットも持っています。
となんだかんだ言っても、矯正しなくても噛み合わせに問題のない上下の歯の位置関係が自然に作られるのが理想。それには、乳児からしっかり顎の骨と歯が成長するように生物学的機能療法を親が施す事が大切です。
「生物学的機能療法」とは、正常な発育を促す訓練の事で、ここでは、口回りから頬、そして、歯の筋肉をしっかり鍛える事と物を咬む事を意味します。なんだか難しそうに感じられるかも知れませんが、なに、よく咬んで食べ、よく笑うといった当たり前の幸せを噛みしめるように日頃の生活を送ればいいだけの話です。
ただし、大人になってからいくら大笑いしたところで、歯並びが自然に改善されるものではありません。何とかしたいと思えば矯正するしかないという事で、しっかり歯を食いしばって真剣に考えてみましょう。

