一生に一度の矯正治療|歯医者さん選び その方法で本当に大丈夫?【矯正歯科マップ】

アメリカだけじゃない、日本でも歯の矯正に興味を持つ大人が増えている


アメリカのパパ・ママたちは、やたらめったら子供の歯を矯正したがると言います。もちろん、日本でも我が子の歯並びは気になるもの。矯正をさせる親は大勢いますが、欧米に比べれば少ないものです。

事実、アメリカ人の歯科矯正率は約50%。2人に1人は矯正治療している事になります。しかも、中流以上の家庭に生まれ育った子どもの矯正率はほぼ100%で、この50%に該当しない人たちの多くは、治療を受けていないというより受けられなかったと見ていいでしょう。その証拠に、そのうちの約80%の人が今からでも歯列矯正出来るものならしたいと回答しています。

それに対し、日本の歯科矯正率は、なんと約20%強。5人に1人経験者がいればいいところなのです。ならば、日本人は元々歯並びが良い民族なのかと言うと、決してそうではありません。それどころか、歯科医が見て歯並びが悪いと思う患者の割合は60%を超えていると言います。むしろ、アメリカの方が60%を切っているのです。にも拘わらず、なぜ、アメリカ人は歯の矯正に積極的で、日本人は消極的なのか?そこには、長年培われて来た文化の違いが大きく影響していると考えられます。

日本では昔から、男子は口をつぶり、必要以上にしゃべらない、笑わないのが理想。一方、女性は手のひらで口元を覆い隠すように笑うのがエチケットとされて来ました。そう、ペラペラしゃべるとか、ニコニコ、あるいはニヤニヤ笑うのは日本男児としては失格で、大口を開けてがはは笑いするような大和撫子もNGだったのです。

そのため、歯並びが悪くても人目に付く事は少なく、それが自分の印象を悪くするなんて心配は無用でした。よって、歯の矯正は上下の噛み合わせに問題がある時のみ行う正真正銘の歯科医療。審美歯科の領域で受ける人など殆どいなかったのです。

また、噛み合わせに問題がないのに、わざわざ矯正などする必要なしというのが多くの歯医者さんの意見。それに対し、欧米では常に笑顔で接する事こそが最良のコミュニケーションで、何かにつけて歯を堂々と見せて笑います。そうなると、白い歯はもちろん、その並びも重要で、相手に好印象を与えるためには整っている必要があるでしょう。そこで、歯科医の間でも子供のうちから矯正する事が推奨されて来た訳です。

しかし、昨今は日本でも、スマイルは大切な男の武器。また、女性も人前で堂々と大笑い出来るようになりました。それに伴い、気になり始めたのが歯並びです。出っ歯だったり、前歯がガタガタだと恥ずかしいという事で、それが一つのコンプレックスとなり、人との交際に消極的になってしまう人も増えているのです。

という事で近年、大人になってから矯正歯科に興味を持つ人が急増しています。今や日本でも、一度でも歯を矯正したいと思った事のある人は50%以上。ただ、そのうちの3分の2くらいは、単に興味関心があるだけで、実際に歯科医に相談した事すらないと言います。本気で前向きに考えている人はまだまだ少ないのが現状です。

その理由の一つが知識不足。まず、歯列矯正と言えば針金を口の中に張り巡らせるいわゆるワイヤー矯正で、見た目が悪い、日常生活が不便になるなどのネガティブな印象が先行してしまうようです。そしてもう一つ、どうしても目が行ってしまうのが治療費。矯正の費用は保険が使えず、とにかく高価ですから、お金持ちでなければ出来ないと思い込んでいる人が圧倒的多数なのです。事実、矯正歯科の治療期間は非常に長く、その間、あの仰々しい装置と上手に付き合わなければならない事は確かです。

さらに、多額の費用がかかる事も間違いありません。しかしながら、専門医も増え、その知識力と技術力がぐんぐん向上して来た昨今、歯科矯正という世界はこれぞまさしく先進医療と言える治療技術の宝庫です。日本でも様々な治療法があり、人目には殆ど分からずに治療する事も可能になっています。加えて、治療費の支払い方法も様々。サラリーマンやOLなど、社会人として頑張っている人なら、低金利のお得なローンを組む事だって出来るのです。

という事で、大人になってからでも決して遅くはない歯科矯正。しかも、成人矯正には小児矯正にないメリットも沢山あります。今回は、そうした大人の歯科矯正について考えてみたいと思います。

一生に一度の矯正治療|歯医者さん選び その方法で本当に大丈夫?【矯正歯科マップ】

大人の歯の矯正と子供の歯の矯正は違う

確かに、子供の歯科矯正には多数のメリットがあります。しかも、時期が早ければ早いほど効果が出やすく、期間も費用も軽減されると言われています。しかし、本当に大切なのは人生の大半を一緒に過ごす永久歯で、期間限定の乳歯ではありません。やはり本格的な歯列矯正は永久歯が生えそろってからという事になります。

確かに、小児矯正では乳歯がまだ完全に支配している時期から治療開始するケースは少なくありませんが、それはあくまでも将来を見据えての施術。歯の位置や向きを変えるものではなく、理想的な顎の大きさや形状を形成する治療です。そのため、おなじみのブラケットもワイヤーも使用しません。主流となるのは、マウスピースやプレートを装着し、上下の顎の理想的な成長を促す治療方法です。

ただ、乳歯はただ単に物を咬むだけでなく、その後に生える永久歯の場所を確保するという重要な任務を担っています。そこで、こうした矯正治療をする事により、28本の永久歯が生えるのに十分なスペースを確保出来るのです。

実際問題として、前歯が斜めに生えていたり重なっていても、目立った隙間のない人は大勢います。という事は、逆に言えば、全ての歯が真っ直ぐ前向きに綺麗に生えそろうだけのスペースがない訳です。じゃあ、なぜスペースがないのかと言えば、その原因は多々ありますが、多いのがあごが狭い、もしくは奥歯が前方に寄っているからといった事です。

となると、事前に顎が前後左右にしっかり形成されれば、永久歯たちはきちんと生えそろう確率が上がります。また、子供の歯のうちに奥歯を後方に誘導しておく事で、それを引き継ぐ形で理想のポジションに大人の奥歯が生えてくれる訳です。

さらに、あごがしっかり発育する事で、顔の骨格がバランス良く整うほか、顎関節症を予防する効果効能も持ち合わせています。そうした事を考えると、幼いころの矯正治療は決して無駄ではないと言えるでしょう。

とは言え、これだけで綺麗な歯並びが作られるという保証はありません。残念ながら、あくまでも予定は予定。ここまで頑張って体制を整えても、全ての歯が真っ直ぐ綺麗に生える確率はそれほど高くないのです。

そのため、最終的には永久歯が生えそろった段階でワイヤーとブラケットを使い、改めて矯正するのが一般的です。そこで、小児矯正では、先のプレート矯正を1期治療、後のワイヤー矯正を2期治療と呼んでいます。つまり、子どもの頃の矯正は2段階で行われ、思いのほか時間もお金もかかるのです。

ただし、全ての永久歯が綺麗に並ぶのには十分なだけのスペースがあれば、抜歯したり、オープンコイルで調整する必要がありません。オープンコイルというのは、歯と歯の間に押し込むバネの事。バネですから、入れたら最後、広がろうとします。その力を利用して、左右の歯を動かし、出っ張っている歯やへこんでいる歯を入れる空間を作ろうというのです。

実はこのオープンコイルスプリングを装着すると、益々見た目が不細工になる上、力の限り左右の歯を押してくれますから痛い。中々大変な治療です。さらに、抜歯も大がかりな治療という事で、こうした肯定を省ければ、一気に楽になります。そういう意味では、間違いなく小児矯正は効果的だと言えるでしょう。

けれど、小学校に上がってすぐぐらいから第1期治療を開始し、永久歯が生えそろった中学生で第2期治療をするとすると、約10年もの間ずっと歯医者さんに通い続けなければなりません。短期どころか、大人の矯正の平均治療期間が3年と言われていますから、3倍以上の長期です。

さらに、先のプレート矯正の費用プラス、後のワイヤー矯正費用となると100万円を超える事も珍しくなく、これまた、大人の矯正と同じくらいか、下手をすればそれ以上になります。そう、小児矯正だから必ずしも治療期間や治療費用を抑えられるとは限っていないのです。むしろ、こうした子供の矯正のデメリットをフォロー出来るのが大人の矯正だと言えるでしょう。

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大人の歯の矯正のメリット1、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療ができる


世の中、子どもにはどうという事がなくても、大人には大切な事が沢山あります。歯の矯正を考える事でそれを発見出来れば、自分にとってはメリットありという事になるでしょう。特に虫歯や歯周病の早期発見・早期治療などは、その最たる例と言えます。

忙しい日本人は、世界でも有数の虫歯保有率を誇る民族です。なんと、虫歯を持つ人は90%以上。しかも、20代以上になるとその人数も本数も急増し、最低でも1本、30代に突入すると平均5本は虫歯があると言われています。そして、その数は着実に増え、アラフォーを過ぎるころには半数は虫歯という人も珍しくないと言うから困ったものです。また、歯周病の罹患率は20代ですでに7割。40代に入ると9割で、もはや立派な国民病なのです。

ではでは、なぜ皆さんそこまで放置しておくのでしょうか? やっぱり歯医者さんが苦手だから? もちろん、それは否めないでしょう。しかし、本当に痛くなったり、歯茎が腫れて出血したり、歯がぐらぐらになれば覚悟を決めて受診します。

実は、虫歯や歯周病は、その痛みや歯茎の異変が現れるまでが非常に長く、水面下で進行して行くガンにも負けないくらい恐ろしい病気なのです。結果、40代で少なくとも一度は歯が抜け落ちたり、抜歯に追い込まれた経験を持つ人が大半だという訳です。

確かに、小中学校の間は有り難い事に学校で歯科検診があり、虫歯や歯茎の病気があれば容易に発見する事が出来ます。そこで、指示された通り歯医者さんに行って治療すれば進行を食い止められる訳です。けれど、高校生以上になると、その歯科検診の機会が一気に減り、社会人は自主的に歯科医院を受診しない限り、早期発見・早期治療のチャンスはありません。結局、自覚がなく、検査もしない、治療もしないという事で気付いた時には手遅れという人が圧倒的多数なのです。

しかしながら、歯の矯正をするには、口腔内を写真撮影や組織検査などで徹底的に調べ、その結果、まずは矯正治療が可能かどうか? どのような矯正方法が適しているか?を定めなければ治療方針や治療計画を立てる事が出来ません。治療計画なしに実行出来ないのが歯科矯正です。よって、必ず念入りな検査をします。その際、虫歯や歯周病があれば、発覚するという訳です。

そして、虫歯や歯周病があれば、その時点では矯正不可と判断され、まず、それらを治療するところから計画が立てられます。ですので、そこそこ早期治療が出来、大事に至る事を避ける事も可能です。加えて、抜歯するのであれば、すでに状態の良くない歯を選択するケースもあります。

さらに、治療中は装置を付けたまま巧みに歯磨きする事が必須で、医院でその方法を伝授してもらう訳ですが、正直、中々いきなり上手に出来る人はいません。そこで、通院ごとにチェックと掃除をしてもらえます。これは明らかに虫歯予防に繋がるでしょう。

という事で、大人の歯科矯正は、お口の健康診断の貴重なチャンスでもあり、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療を可能にするという訳です。

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大人の歯の矯正のメリット2、治療の方法や医院を自由に選べる


前述の通り、子供の歯科矯正は、第1期がプレートを使ってあごの骨格を整える治療、第2期がブラケットとワイヤーで歯の位置や方向を整える治療です。今、注目されているインビザライン矯正やインプラント矯正は出来ません。

インビザラインというのは、超薄型軽量で透明な「マウスピース型歯科矯正装置」と呼ばれる器具を装着して歯を動かすもので、全く戸言っていいほど人目には分からない矯正術です。2週間に一度くらいのペースで、完全オーダーメイドの自分専用マウスピースを交換しながら2年前後かけて歯の位置と向きを整えて行きます。

ただし、予め歯の動きをコンピューターで緻密に計算し、最初から最後までに使用するマウスピースをまとめて制作するのがお約束。なぜなら、アメリカで作られるため、都度オーダーしていては、とてつもない時間と送料などの費用がかかるからです。

ところが、小児矯正における第2期治療器は10代前半、まさしく育ち盛りで、子供たちの骨はどんどん成長して行きます。当然、顎の骨格も発達して行くため、1年後・2年後の状態を計測する事が出来ないのです。よって、インビザライン矯正も出来ない事になります。

一方、そんな子供たちの骨の成長を上手に生かして歯を矯正しようというのが「拡大床」と呼ばれる歯科矯正。歯の裏側に装置を取り付け、顎を広げて空間を作る小児の第1期矯正と第2期矯正のいいとこ取りをしたような治療法です。基本的にはワイヤー装置を使った裏側矯正と近く、一見、舌が当たって飲食や会話がしにくいように見えますが、実はこの装置、食事の時には取り外す事が出来るのです。

しかも、本格的な裏側矯正は高度な技術を必要とするため、歯の矯正術を極めた専門のドクターがいる矯正歯科やクリニックでしか受けられません。治療費もはっきり言って最高級です。それに対し、子供向けの拡大床は患者自身が脱着出来るくらい扱いが楽で、安価なのです。そこで、虫歯や歯周病治療をメインとしている町の一般紙かでも気軽に取り扱えます。いつも行っている歯医者さんなら、一人で通う事が出来、親も子も安心という訳です。

という事で、この拡大床は今、大人のインビザラインに負けないくらい人気急上昇中の小児矯正法になりつつあるのですが、それと同時に、トラブルの数も急上昇中。何しろ、本来この装置は、骨を含んだ歯の土台の部分を動かすものです。そのため、1ミリ・2ミリの矯正には適しているのですが、それ以上エスカレートすると顎が広がりすぎ、上下の噛み合わせがおかしくなる危険性を秘めているのです。

実際、上の歯を拡大床で広げすぎたため、下の奥歯が合わなくなってしまったという例は少なくなく、もちろんその反対のケースも多々報告されています。しかも、一度ずれてしまった土台を元に戻すのは非常に困難で、実は非常にリスクの高い治療法だと言えるでしょう。

ですが、その反面、全く効果が出ないケースも珍しくありません。たとえば、5年間も治療を続けたのに出っ歯のまま改善されないとか、治療終了後に装置を外したところ、再び元に戻ってしまったというトラブルなども報告されています。

ですので、こうした先進の歯科矯正を受ける場合は、専門の知識と技術を持った矯正歯科医のいる医療機関で治療を受ける事が大切になるでしょう。ですが、子供の場合、通院の場所と距離も重要で、安心して通えるエリアの歯科医院やクリニックでなければなりません。遠方になると送り迎えが必須となり、親は経済的負担だけでなく、時間的な負担も大きくなってしまいます。

しかし、大人の場合は、自分に最も適した治療方針や医師、そして立地を自由に組み合わせ、お世話になる医院を選ぶ事が可能です。これは全てが自己責任で選択出来るからこその事で、成人矯正ならではの大きなメリットの一つだと言えるでしょう。

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大人の歯の矯正のメリット3、高価な治療費もローンを組んで少しずつ支払える


歯の矯正と言えば金属を歯に被せるワイヤー矯正が今もなお、日本では最もオーソドックスな方法です。ただ、そのワイヤー矯正も、器具を歯の裏側に装着する事で人目に付くのを避けられます。

“リンガル矯正”とも呼ばれる裏側矯正は、単に人目に付きにくいだけでなく、矯正中の側貌をチェックしやすいというメリットも持ち合わせています。側貌とは、横顔のフェイシャルラインを表す歯科用語。当然ですが、歯並びが変われば、顔の表情も変わり、印象も変わります。その変化を実感しやすいという訳です。

しかし、その一方で、装置が舌の動きを邪魔するため、食事や会話がしにくくなるデメリットを持っています。その裏側矯正のデメリットをも克服したのがマウスピースを使ったインビザライン矯正。これなら、目立たない上、飲食や会話に支障を来す心配も殆どありません。

さらに昨今は、矯正用のインプラントを歯茎に埋め込む「インプラント矯正」という方法も徐々に普及し、治療期間を大幅に短くする事も可能となりました。つまり、目立たず、快適に、早くという従来とは正反対の矯正も夢ではないのです。

とは言え、小児矯正で使えるのはリンガル矯正まで。インビザライン矯正やインプラント矯正は、成長が止まり、顎の骨が安定してからでないと出来ません。そのため、全ての矯正術が適用出来る年齢としては10代後半、早くても高校生以上という事になるでしょう。

ですが、この年齢は幸か不幸か、歯科検診の機会が急激に減り、虫歯や歯周病のリスクが急速に高まる年齢でもあります。そこで、検診の機能をも兼ねた矯正治療に向けての検査を受けるだけでも十分価値ありです。

さらに、子供だから費用が抑えられる訳ではありません。本格的なワイヤー矯正やリンガル矯正になると、大人も子供も関係なし。同等の治療費が掛かります。かと言って、比較的リーズナブルな拡大床矯正は、矯正専門の医院やクリニックでないとリスクが高く、遠方になると通院に時間とお金がかかりかねない訳です。

という事で、10歳までに第1期矯正治療をする事で、第2期に行う本格的な歯列矯正が楽になったり、顎関節症を予防出来るなど、それなりのメリットはあります。しかしながら、小さな子どもならではのリスクもある訳です。それを考えると、無理に小児矯正などしなくても、成人矯正のみでも十分だろうと思われます。

しかも、満20歳以上になると、「デンタルローン」や「デンタルクレジット」などと呼ばれる歯科治療費専用のローンを組み、毎月少しずつ自分で支払いする事も出来るようになります。

学生や専業主婦の場合は、親やご主人に保証人になってもらったり、代理人契約してもらう必要がありますが、社会人として定職を持っていれば、派遣やフリーターでもOK。誰にも迷惑をかける事なく矯正治療が出来ます。これなら、審美目的でも文句は言われない、言わせないという訳です。

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