

矯正の費用は分割払い出来ると言われてもねぇ、実はローン組めない人もいる
歯科医院でインプラントや矯正のような高価な歯科治療をすすめられる場合、それと同時に分割払いが可能であると言われる事があります。ただし、歯医者さんが言う分割払いとは、信販会社やローン会社の出す『デンタルローン』である可能性が低くありません。つまり、誰でもが必ず利用出来るものではないという事です。
特に100万円を超える事もある歯科矯正においては、年齢だけでなく、収入の面でもローン組めないという人は大勢います。ただ、その一方で、学生や主婦でも利用出来る事もあって、確かに100%デンタルローンが組めない人は、それほど多くないのかも知れません。けれど、年齢や年収、信用情報等の審査基準に問題がなくてもデンタルローンを組めないケースだってあります。
そこで今回は、
- デンタルローンを組めない人とはどんな人か?
- デンタルローンが組めないケースとはどんなケースか?
ちょっと危なそうな人も含め、検討してみましょう。さらに、もしローンが使えない場合、どうすればまとまったお金を用意出来ないまま自由診療の歯科治療を受けられるのかを考えて行きたいと思います。
と、その前に、歯医者さんのすすめるデンタルローンとはそもそもどのような金融商品なのかを確認しておきましょう。とは言っても、その名の通り、歯科治療費を用立てるローン商品です。「ジャックス」や「セディナ」、あるいは「アプラス」や「オリコ」、「イオンプロダクトファイナンス」といった信販会社やカード会社、ローン会社が出していて、“デンタルクレジット”と呼ばれる事もあります。
一部の銀行でも取り扱っていますが、いずれも歯科に支払う医療費以外には使えず、交通費等の諸経費を上乗せして借り入れするという事の出来ない目的ローン。その代わり、使途自由なフリーローンに比べて低金利です。さらに、限度額や返済期間にも余裕を持たせた設定となっています。
歯は重要な身体の一部ですから、虫歯や歯周病になると健康保険を使って治療する事が出来ます。大半の人は、この段階でお金の心配をする事などまずないだろうと思われます。また、折れたり抜けたりしても保険で差し歯や入れ歯を補充する事は出来ますので、それほど深刻に考える必要はありません。
ところが、保険治療が可能な歯は分厚い割に強度に欠けるというデメリットを持っています。そのため、どうしてもQOLを下げてしまうという理由を武器に、歯科医は良質な金属製の義歯や歯根から作るインプラントをおすすめしてくれる訳です。しかしながら、患者としては、そうあっさり、“じゃあ、それで・・・”とは言えない事情があります。何しろ、良質な義歯もインプラントも保険適用外で、全額自己負担です。
さらに、噛み合わせや見た目など、歯列に関する問題やコンプレックスがあっても同様。歯並びを整える矯正治療には、想像しただけでも気が遠くなりそうな長い時間とお金がかかります。
とにかく、薄くて丈夫な金属の義歯や歯根から作るインプラント治療は1本でも何十万もしますし、全体矯正ともなると、どんなに安く見積もっても50万円を下らないのです。たちまちお金の問題が急浮上して来ます。
そこで、“心配しなくても大丈夫、分割でコツコツ支払いすればいいんですよ。”と歯医者さんが持ち出すのがデンタルローンという流れです。よく、英会話教材の実演販売に興味を示すと、“ローンを組めば、月々5,000円ですよ!”とか言われるじゃないですか。あれと同じ。たとえ100万円かかる矯正の費用でも、7年84回払いにすると、月々1万円ほどの支払で済むという訳です。
ただし、歯列矯正の平均的な治療期間は2年から3年と言われていますから、治療が終わった後もずっと返済は続きます。しかしながら、それ以前に、申込条件や審査基準というのがあって、それを満たしていなければローンを組む事自体出来ません。当然、これを使ってインプラント治療や矯正治療を受ける事も出来ないのです。


既存の借金がある人はローン組めない可能性あり、矯正する前に確認しよう
『デンタルローン』を使って矯正治療を受ける場合、借金返済の義務は生じますが、取り敢えずまとまったお金がなくても問題ありません。しかも、金利の低い商品になると、実質年率3.9%から4.5%。高くても14%台で、クレジットカードのリボ払いにかかる手数料よりかなり低金利です。そのお陰で、年利4.5%で100万円の融資を受け、7年84回払いで返済するとしても、月々の支払い額は1万4,000円弱。多くの人が無理なく支払える金額です。
ただし、すでに消費者金融や銀行のカードローンなどで借り入れし、債務が残っていると話は違って来ます。そこにこの新たな借金返済が加わる事で、首が回らなくなる人もいるかも知れません。という事で、審査落ちする可能性があります。
ちなみに、多くのデンタルローンは利用限度額300万円。高いものになると500万円というものもあって、どんなに高度な歯の治療費でも十分まかなえそうです。ところが、実際の貸付可能額は個々の収入によって異なり、限度額目一杯まで借り入れ出来る人はそう多くないものと思われます。なぜなら、概ね年収の3分の1までが自室的な利用限度額だからです。つまり、年収300万の人なら100万円前後が限界という訳です。
さらに、先のような理由から、既存の借金残高があれば、それを合算した上で100万円となります。実際には、消費者金融の総量規制ほど厳密な規制はなく、ある程度柔軟には対処されるものと思われますが、それでも、だからと言って、極端に融通される訳ではありません。すでに銀行系カードローンで50万円借り、その残高が30万円ある場合、70万を超える融資は俄然難しくなるでしょう。
そしてもう一つ、既存の借金の返済を滞納していたり、延滞していると、かなりの高確率で審査落ちします。過去に焦げ付きと呼ばれる借金踏み倒しや自己破産歴があれば100%NGです。しかも、たった一度クレジットカードの引き落としが出来なかっただけでも汚点となり、金融事故を起こした事ありとなってしまうから大変。その情報は個人信用情報機関に登録され、間違いなくローン審査に悪影響を与えます。
ただし、こうした金融事故の履歴は半永久的に残るものではありません。たった一度カードの引き落としが出来なかった程度なら、半年から1年で抹消され、その後は信用情報に問題なしとなります。たとえ自己破産したとしても、10年後には身ぎれいになれ、再びデンタルローンを使って歯列矯正するチャンスは巡って来るのです。
しかしながら、履歴が残っている間に申込みすると失敗するので、気になる方は信用情報機関で状況を確認してから手続きされる事をおすすめします。現在、日本国内には“JIC”こと「日本信用情報機構」と“CIC”という2つの大きな指定信用情報機関があります。とは言っても、双方が持つ事故情報は共有出来るようになっていて、調査する金融会社はたいてい両方に加盟しています。なので、どちらか一方を確認するだけで十分。いずれの機関も、パソコンやスマートフォンから簡単に情報開示申込出来ます。


そのローン組めないは私じゃなく、強制を受ける歯科医院に問題があるのかも
私たち消費者の金融動向は、驚くほど簡単に察知されます。クレジットカードを作った時はもちろん、携帯電話を分割で購入した時にも、その事が個人信用情報機関に登録され、その後、その返済状況や支払状況が随時追記されて行く訳です。そして、それを容易に調べられるとなると、何だか恐ろしい気もしますし腹が立つ方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、これは金融事故を事前に防止するためには必要不可欠な事であり、時に我が身や大切な家族の命を守ってくれる事にもなります。それに、裏を返せば、たとえ借金があっても、カードをバンバン使っていても、まじめに返済さえしていれば信用情報は確立されるのです。将来、車や住宅購入など、大きな買い物をするに当たって融資を申し込む際、優位に事が運びます。
むしろ、いつもニコニコ現金払いで信用情報機関に登録すらされていなければ、信用度を評価するツールがなく、これもまた審査落ちの要因となりかねません。デンタルローンを組むにあたっても同様で、審査が難航しそうです。ただし、デンタルローンの場合は、自分自身ではなく、治療を受ける歯科医院側に問題があってローン組めないというケースも多々あります。
というのも、実は信販会社やローン会社が出すデンタルローンは、クレジットカードと同じ立替払い方式。金融会社が歯科医院に最初に必要な治療費を一括で支払ってくれるというもので、各社の定型医院や加盟歯科でなければなりません。その医療機関が全国的に見てまだまだ少なく、どこの会社の提携医療機関もないという県もあるのです。
そのため、治療を受ける歯科医院がどこの金融会社とも取引していない、あるいは、自分の利用したいデンタルローンを扱う会社と取引していないというケースが多々あります。そうなると、どうしてもデンタルローンを使って強制治療したければ、遠路はるばる県外の歯科に通うしかない。という事で、余計な時間とお金がかかり、月々のローン返済と会わせると多額の出費となってしまいます。とは言っても、自分に何の落ち度もないのにも関わらずローンが組めないのですから困ったものです。
そこで、こういう場合は素直に地元の銀行や信用金庫に相談するのがお利口さん。たとえデンタルローンと銘打った金融商品はなくても、多くの金融機関が自動車ローンや教育ローンなどと同じ資金使途を定めた目的型ローンの一つとして検討してくれるものと思われます。そして、年収や信用情報に問題がなければ通るでしょう。
ちなみに、金融機関のローンは直接払い方式で、契約者の手にお金が入ります。それを自分で支払うという形ですから、受診する医療機関は問いません。治療方針と治療費を明記した見積書さえ提出出来れば融資は受けられます。
ただし、銀行ローンになれば申込基準は厳しくなり、主婦や学生はいくらそこそこの年収があってもNG。親や夫が代理契約する事を指示されたり、金利が大幅に上がる事も考えられます。事実、都市銀行の中には今や個人向け融資はフリーローンが主流で、実質年率10%を大きく上回るところも少なくありません。当然、月々の返済額も大きくなります。それでも、通院のための交通費等を考えるとずっと安上がりになる可能性は高く、決して悪くはない方法だと思われます。


ローン組めないを回避するためには、治療費を抑えた矯正を選ぶべし
信販会社やローン会社など、民間の金融会社が出す『デンタルローン』の大半は、年齢と収入さえ満たしていれば申込出来ます。年齢は、一部に満18歳以上というところがありますが、概ね満20歳以上。学生や主婦でもパートやアルバイトをしていて、そこそこの収入があれば、親や夫が連帯保証人に付く事でOKとなる事もしばしばです。
という事で、信用情報に問題がなく、デンタルローンを出す金融会社と予め契約している加盟員や提携しかで治療するのであれば、それほど心配する必要はなさそうに見えます。とは言え、実際にはちょっと危なそうな人も少なくありません。そして、その最たる例は、やはり収入。安定且つ継続した年収という事で、勤続年数が浅いと、正社員でも審査落ちする事があるのです。
さらに、その額が重要で、融資希望額が多ければ多いほど高年収である事が求められます。よって、より確実性を上げるためには、必要最低限の治療を必要最低限の金額で受けられるように計画し、申し込みする必要がある訳です。
ちなみに、インプラントや矯正の費用で最も効果なのはシステム費。いわゆる装置代で、インプラント治療においては人工歯根と義歯のセット、矯正治療においてはマウスピースやブラケットと呼ばれる歯を動かす装置になります。インプラントシステムの平均は約10万円から15万円、矯正装置の平均は約70万円から100万円といったところでしょうか。
ただし、それぞれの装置を装着するための施術が必要で、その医師の技術料が必須となる訳です。特にインプラントの場合、メスと麻酔を使った外科手術となりますので、その費用が馬鹿には出来ず、装置と同等か、時にそれを上回る事もあります。という事で、そのトータルは30万円から50万円。そして、これだけのお金を借り入れする場合、その約3倍の90万円から150万円の年収が必要となるものと推定されます。
とは言え、年収150万なんて、サラリーマンやOLなら楽勝の数字ですし、パートやアルバイトでも、このくらい稼いでいる人は大勢います。そう、決してハードルの高い話ではないのです。
ところが、歯科矯正となるといささか話は違って来ます。最低でも70万という事は200万円以上の年収が必要で、一気にハードルは上がります。100万円借りるには正直、パートやアルバイトでは厳しいでしょう。結果、ローン組めないとなる人が少なくないものと思われます。
けれど、矯正の場合、装置を装着したり、調整する医師の技術料も含んで装置代としている歯科が目立ちます。という事は、安価なプランを選べば、装置代と技術料の両方を下げられるという事です。しかも、インプラントの場合は安価なシステムを使うとトラブルが多いと言われていますが、矯正はそうではありません。主には見た目の綺麗さや治療期間中の快適さによる価格の違いです。
確かに、最も安価な金属ブラケットを使った表側矯正は見た目も悪く、付け心地も悪い。様々な面で不具合を感じます。それに対し、装置を裏側に装着するリンガル矯正は、自身の不快感はあるものの、人目には殆どつきません。さらに、薄くて透明なマウスピースを使ったインビザライン矯正やアライナー矯正になると、傍目に分からないだけでなく、自分自身も快適で、精神的ストレスを大幅に軽減出来る訳です。その代わりに、治療費用は高価になります。リンガル矯正やマウスピース矯正は表側矯正の約3割増しです。
ですので、見た目や快適さを諦める事により、ローン審査に通る確率は上げられる訳です。しかも、最もリーズナブルな金属ブラケットを使った表側矯正は、最も多くの人に確実にフィットし、最良の矯正治療が施せるシステムだと言われています。ローン組めないを回避するには文句なしの方法なのです。


ローン組めない場合でも、矯正だって受けられる、医療費控除だって受けられる
金属義歯やインプラント、歯列矯正など、保険適用されない歯の治療費は高価です。そう簡単に一括で支払う事が出来ません。そこで、出来る事ならローンを組んで毎月少しずつコツコツ支払えればと考えたい訳です。ところが、ローン組めないとなると、たちまち焦ります。どうしようと思ってしまわれる方も多い事でしょう。
しかしながら、前述の通り、インプラントにしても歯科矯正にしても、最もエクスペンシブなのはシステムと呼ばれる装置です。特に矯正治療の場合、この装置料に医師の技術料を含んでいる事が多く、この部分さえ貯金で払えれば、後はそれほどでもありません。確かに、最初は精密検査が必須となるため、なんだかんだで数万円かかる事もありますが、その後は付きに1度の受診で数千円というのが一般的です。
さらに、仮にデンタルローンを利用するにしても、ある程度の貯金があるのなら、それを併用する方が断然お得。取り敢えず貯金でまかなえる分をまかない、足らずを銀行やローン会社から借り入れするという形です。いわゆる住宅購入の際の頭金に該当するもので、これがあるのとないのとでは大違い。頭金が多ければ多いほど借金は少なくなりますから、利息も少なく、月々の返済額も少なくなります。また、短期間で完済する事も可能となり、その点でも利子が減額される訳です。
加えてもう一つ、「院内ローン」という独自の分割制度を設けている歯科医院もあります。保険診療をメインとしている一般歯科の院内分割制度は返済期間が短く、治療開始から治療終了までに完済する事という条件が付いている事が多いですが、審査らしき審査もありませんし、なんと言っても殆どが無利息。月々の支払い額は大きくなるものの、断然お得なのは間違いありません。
という事で、銀行や信販会社のローン組めない、貯金もないからと言って、諦めるのはまだ早い。本気で歯の悩みやコンプレックスを解消したいのなら、頑張って院内分割で治療する事だって出来るのです。確かに、院内ローンを利用するにしても、貯金があって、頭金が払えれば後が楽です。しかしながら、100万円の矯正費用を3年36回払いで返済すると仮定したときの月々の支払い額は約2万7,800円。このくらいなら何とかなるという人はすくなくないでしょう。
しかも、デンタルローンを使った時の利息、100万円を7年84回払いで借り入れする先の例で言うと、16万7,562円がまるまる浮くのです。仮に70万円を同じ条件で借りたとしても、その利息は11万7,283円という事で、これは大きいですし、頑張る甲斐があるというものではないかと思われます。
尚、院内分割制度を使うと医療費控除が受けられないという話を耳にする事がありますが、決してそんな事はありません。医療費控除は年間に支払った医療費の総額が一定金額を超過した場合に、予め納めた所得税の一部が還付されたり、住民税が減税されるというもの。確かにデンタルローンを使うと、金融会社が一括で立替払いしてくれますから、恐らく100%控除の対象になるでしょう。
ですが、先のように歯科医院に分割で支払っても年間30万円を優に超えます。また、多の医療にまつわる費用や交通費なども領収書さえあれば経常出来るため、医療費控除額に多大なる損害を与える心配は無用なのです。
という事で、インプラントや矯正をメインとしている医療機関やクリニックでは一部、治療終了後も返済を続けられるように配慮してくれる事もありますので、まずは治療方法と支払方法について、医師や医院と徹底的に話し合ってみましょう。

